砂の街 San Pedro de Atacama
塩湖というと世界最大のウユニ塩湖が思い浮かぶかもしれない。雨季の晴れた瞬間に見られる、あの幻想的な一瞬を体験するためだけに日本からはるばる2日以上かけて訪れる人はあとを絶たない。
「ウユニ塩湖には死ぬまでにはいきたいよね~」
しかし、僕としてはそのウユニ塩湖の(チリ規模で)隣町にあたるサンペドロデアタカマの方を自信をもっておすすめするだろう。
世界で二番目に大きいアタカマ塩湖を見ずに死ねるのだろうか。
どこかから「二位じゃだめなんでしょうか?」が聞こえてくる気もする。
自然の厳しさのなかに見られる多様なバリエーションを体験できる、世界有数の街なのではないか。
Salar de Atacama_小屋
絵のような風景_点に見えるのはビクーニャの群れ、初めて蜃気楼を見た
今回の旅は4泊5日、チリの北端(赤道側)に位置するサンペドロデアタカマという世界一乾燥した街とその周辺に行ったときのことをご紹介する。
日本から行くとするとチリの首都サンチアゴまでアメリカでのトランジットを含めて33時間程度、そこから国内便で2時間、空港から40分程度でこの街につく。丸2日というところだろうか。僕の住む街コンセプシオンはサンチアゴからバスで南に7時間。なので夜行バスでサンチアゴまで行ってから飛行機を乗った。これでも半日以上かかっているが、日本から行くことを考えたらたいしたことない。バスで行けなくもないがサンチアゴから24時間程かかるらしい。世界一周してる人に聞くとチリのバスは快適で、24時間もあっという間に過ごせるらしい。南米を一周してるような人の感覚の話でしょうと疑いたくなる気持ちもわかるが、実際チリのバスはめちゃめちゃ快適で、かなりフラットになるし、足掛けは標準装備、超長距離バスでは映画も見れてwifiも使える。静かに走って120km/hくらい平気で出してくる。
今のところ休日をバスの中だけで過ごす気にはなれないので経験してないが、いつかはトライしてみるのもいいかもしれない。
Vicugna_何を食べているのか、食事中のビクーニャ
タツノオトシゴみたいな形をしているチリは背中をアンデス山脈、おなかを沿岸部とするとそのちょうど真ん中を南北に走る一本の高速道路がパタゴニアから砂漠まで続いているのだ。
西方への旅というタイトルにしておいてなんだが、チリに来た時点で旅の選択肢は北か南か、この二択しかない。
飛行機の高度はおよそ1万mと言われている。これは空気の密度が薄くなると抵抗が少なくなるから高くしたいという理由と、エンジンを稼働させるためにこれ以上高度をあげられないという2つの間を取っているかららしい。アタカマへ近づくと高度は変わらないはずなのにどんどん陸が近づいているように感じる。
大地が急激に高くなりだしたのがわかった。
ずーーと砂漠。砂というよりごつごつした岩
サンペドロデアタカマという町は標高2400mですでに富士山の5合目と同じらしい。そして1540年に成立したチリで最も古い街。
標高がマイナスな街の出身の僕からすると、空港に降り立った時点ですでに酸欠を感じ、体がふわふわしていた。空港の周りは何にもない。水は一本300円。大丈夫なのか、、、
何もないところに空港がある
高山病の予防のためにはとにかく水を飲まなきゃいけない。一日2Lは飲みなさいとどこでも言われる。飲んでも飲んでもトイレにいく気が起きない。汗もかいてなかった気がする。体が高地に順応するために酸素が必要だけど、空気中の酸素が薄いから血液中の水分を分解して取り入れるから水を飲んで取り入れることが必要らしい。
街についた。低層の建物が地面にぺたっとくっつくように広がっている。なかには中庭があり、植物で強い日差しを遮りながら快適に過ごせるレストランも多い。観光客がくるおかげで街としてはかなり潤っているのだろう。一歩街から出てしまうと何もない、いつ死んでもおかしくないなと思うのだった。上がった息を落ち着かせるため、深呼吸をしては息を止め、より多くの息を吐き出して歩く。
San Pedro de Atacama
この街並みの入り口だけに注目した写真を集めたので、ぜひこちらのworks から
世界一乾燥している町は世界一よく星が見える街だった
大地と湖と空
ずーっと続く道_ちょっとずつ上っている
Moon Valley_月の谷
ここは地球なのだろうか?そんなことを考えさせられる。普段住んでて地球って?なんて思ったことはない。薄い空気と強い太陽、街から車で移動すること1時間、気が付いたら高度4850m。モンブランの頂上を超えていた。激しい頭痛と心臓への圧迫感、足は動けと念じてやっと動く様子。こんなところに人間が住んでいると思うと、住むって何だろうと考える。
完全に高山病に。途中から写真を撮った記憶がないのに写真がある。
一日目に一番高いところへ行くツアーに行ってしまったのがいけなかった。前日から水はたくさん飲んでいたし、酒も飲まずにコカ茶を飲んでいた。コカは言わずもがな日本ではもちろん体験できない。高山病に効くといわれているがお茶くらいじゃなんとも感じない。ガイドは葉っぱを口に含め、白い粉(ココナッツ?)と一緒に口に含んで噛み続けていた。
「これ噛んでないと意識失って事故おこしちゃうからよぉ」
とチリの独特の訛りのあるスペイン語で説明してくれた。(大丈夫なのかこいつ...)
Monjes de la_砂漠の真ん中に岩
サンペドロデアタカマを拠点にして各方向にツアーがたくさんある。どれも砂漠であることには変わりないのだけれど、自然のすごさには頭が上がらない。砂、岩、植生、水どれをとっても同じ物はなく、それぞれが圧倒的な自然の力を持っている。
どの風景も鮮やかに目に映る。
Geyser_間欠泉と露天風呂
Salar de Tara_一日目のタラ塩湖
Piedras Rojas_赤い岩と水色の湖
Laguna Meniques_青い湖
Church of San Pedro de Atacama
Sand boarding on Death Valley_一番の思い出
この街に来てから建築に対する考え方が変わったかもしれない。
もともと、日本の建築家とチリの建築家が考える、自然やランドスケープと建築との関係について興味というか疑問があった。チリでのこのプロジェクトOchoalcubo(http://www.ochoalcubo.cl/)で顕著に見て取れる。ここでは8組+8組の日本とチリの建築家がチリの沿岸部に別荘を建てる。日本からは西沢立衛や藤本壮介、チリからはアラヴェナなど豪華な面々だ。うちのPvEは提案まで作ったが企画側とそりが合わずに離脱したらしい。
日本はどの建築家も自然に寄り添おうとしているの対して、チリ人の建築は自然を征服してコントロールしようとしているように見える。同じ敷地なのにこんなに自然に対する構えが180°違うのか。
アタカマ砂漠に来て、この街の歴史や人々の暮らしを見てなんとなくその理由がわかるような気がした。
こうして、チリ国内を旅してまわり、チリと日本との自然の厳しさの共有点と文化的な相違点から建築の捉え方の範囲を広げたいと思っている。
nemo
Church in Machuca
Comments