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ご当地建築家 バルセロナ編

こんにちは、お久しぶりです。バルセロナに留学している岩田です。

学校の提出が突然一ヶ月のびた関係で、旅行やらインターン探しやらが重なってブログ書く時間がありませんでした。けど、やっと一段落ついたので再開します。

それにしても、スペインの適当さにもろに被害を受けた。予定表では最終提出が5/12だったのに、直前になって6/16に変更になりました、これがスペインクオリティー。

 

さて、今回はご当地建築家というテーマで書いていこうと思う。

スペインの建築家と言って思い浮かぶのは、故人では大巨匠GaudiやEnric Miralles、現在ではプリツカー賞も受賞し世界的に活躍しているRafael Moneo、今年プリツカー賞を受賞したRCR、日本にも作品を残しているRicardo BofillやLapeña & Elías Torres 、2015年にサーペンタイン・ギャラリー・パビリオンを担当したSelgascanoなどではないでしょうか。

スペインの建築の流れとしては大きく分けてバルセロナ派とマドリード派の2つの派閥があり、それぞれ全く違った歴史を辿っていて、キャラクターの違った建築家が生み出されています。Kenneth Framptonの著書「現代建築史」によると、マドリード派は2つの有機派(新アアルト派と新ライト派)からなり、独立した建物を目標としているのに対し、バルセロナ派は建築批評とバルセロナの都市の組成変革という2つの活動を目標としている。

その中でも、Rafael Moneoはマドリードを卒業し、マドリードとバルセロナで教鞭をとっていたため、2つの派閥のどちらとも縁が深く、現代のスペイン人建築家にはモネオの影響を受けていないものはいないといわれているほど。

マドリードの建築家も面白い人が多くて紹介したいのだが、今はバルセロナにいるので今回はバルセロナで活躍している建築家を紹介したい。

もう既に藤村くんがカタルーニャを代表する建築家であるEnric Mirallesを紹介しているので、今回は巨匠ではなく、日本ではあまり知られていない若手の建築家を紹介した方が面白いかなと思うので、今バルセロナでホットな建築家について書いていきたい。

 

現在僕が留学しているETSABを卒業したアルゼンチン人のRicardo Floresとスペイン人のEva Pratsの2人が主宰する設計事務所である。

左:Ricardo Flores 右:Eva Prats

写真引用(http://barcelonogy.com/the-new-sala-beckett-by-floresprats/)

オフィスはバルセロナの中心地にあり、ドアのベルが自転車のベルだったり、中国や日本の骨董品や多くの模型が壁に吊り下げられていたり、彼らの遊び心を感じられるオフィスである。彼らの一風変わったホームページにアクセスすると、事務所の様子が見れるので時間があれば見てみてほしい。ちなみに僕はこのオフィスで7月から2ヶ月間インターンをする。

彼らの特徴はというと、すべてのドローイングを手描きで行っていること。

集合住宅のアイソメ図

詳細図まで手描き

図面引用(http://www.floresprats.com/)

圧巻のドローイングには、その形態やフォントなどミラーレスの影響がみられる。それもそのはず、彼らはミラーレス事務所で働いていたのだ。ミラーレス事務所出身の所員は皆ミラーレスと同じ線が描けるらしい。

Flores Pratsのドローイング

図面引用(http://www.floresprats.com/)

Enric Mirallesのドローイング

図面引用(http://www.plataformaarquitectura.cl/cl)

彼らは「Thought by hand」というタイトルの作品集を出しているとおり、数多くの手描きのドローイングと模型をつくり、まさに手を使って考えて作品を作り上げている。

そして作品を作り上げるまでのプロセスをとても重要視していて、プロジェクトごとに最終的にスタディ模型や図面を大きな木箱にまとめてアーカイブする。手を動かしたプロセスの中に新たなヒントや学びを発見することが出来るからだという。

彼らはETSABでもスタジオを持っているのだが、彼らのスタジオも全て手描きと大きな模型が条件となっていた。

プロセスをアーカイブした木箱

この事務所の作品で特筆すべきものと言えば、昨年4月に竣工したSala Beckettである。

2階ロビー。立体的で複雑なトップライトから光が差し込む。

カフェ。むき出しの既存壁が目につく。

エントランスホール。既存のオブジェクトが入り交じる。

劇場スペース。自然光を採り入れることができる。

アイソメ

写真及び図面引用(http://hicarquitectura.com/2016/09/flores-prats-arquitectos-sala-beckett/)

この作品は長年閉鎖されていた劇場の改修である。

ドア枠や床タイルの模様まで既存建築のすべてを丁寧に図面化し、それらを一度解体し、その既存の部位を使い再構築したもの。

その結果現れた空間はなにか不思議な雰囲気を全体が醸し出している。新旧が融合し、それらが明確に区別されることなく混ざりあっている様子は、なんというかところどころ植物に纏われた廃墟的な美しさのようなものを感じる。

この作品の中に過去の亡霊のようなものが見え隠れしていて、その過去の亡霊が空間を彩り、より魅力的に見せているのであろう。

新しいタイルと過去のタイルを並置したり、古い材料を新しい塗料で塗りつぶすことでその境界を曖昧にしたり、素材の扱い方が巧みだ。

色と新旧の素材を組み合わせる

写真引用(http://hicarquitectura.com/2016/09/flores-prats-arquitectos-sala-beckett/)

カフェスペース。 新旧タイルの並置

新旧の素材を色で統一

この古い材料も新しい材料と同列に扱うということはミラーレスから学んだことの一つだと彼らはいう。さらにミラーレスはその建物の装飾や構造や蓄積された塵ですら時間を表象するポジティブなものとして捉え、しっかりと読み込むことで街の歴史にアプローチできると考えていたのだ。

実はこの作品をはじめて見た時に、この事務所に行きたいなと思ってアプライした。

自分の興味である改修におけるマテリアルの扱い、そしてどう新旧の関係を作り上げるかっていうところに力を入れているように思えたし、既存部への真摯な姿勢とまるで過去と手を取り合って新しいものをつくりあげている様が良いなと思った。

ちなみに、この作品はCasa Brutusにも特集されている。

他にもマヨルカ島の邸宅を改修した作品やバルセロナの郊外にある集合住宅など、改修や集合住宅を中心に作品を残している。また、中世のルネサンス絵画から建築的な要素を取り出して、作品をつくったり面白そうな活動もしているらしい。さらに、地元のパン屋と協働して展覧会用にロゴのクッキーを作ったりもしている。

ロゴや模様のクッキー

写真引用(http://barcelonogy.com/the-new-sala-beckett-by-floresprats/)

 

そんな彼らにも彼らの師であるミラーレスの亡霊が見え隠れしているような気がする。若くしてこの世を去った天才建築家ミラーレスの遺伝子が確かに現在まで受け継がれていて、少しずつ芽を出しつつある。そんなところに触れられればバルセロナに来た意味も大きいかなと思う。

彼らのスタジオを取っていたわけでもないため、まだまだほんの一部しか分かっていないので、本当はインターンしてから紹介したかったのですが、ご当地建築家ということで今回思い切って取り上げてみた。

短い期間ですが彼らの思想や設計のプロセスを学べるように精一杯頑張りたい。

またインターンが終わったら、詳しくかければいいかなと思っている。

それではこのへんで。

イワタ

参考

http://www.floresprats.com/

http://barcelonogy.com/the-new-sala-beckett-by-floresprats/

http://hicarquitectura.com/2016/09/flores-prats-arquitectos-sala-beckett/

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