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進化し続けるまち、バルセロナ

こんにちは、バルセロナに留学している岩田です。

今回のテーマは街並みということですが、バルセロナの街について書いていきたい。

バルセロナにはガウディなどのモデルニスモ建築をはじめとして様々な建築があるけれども、何よりも街としての魅力に満ちあふれている。

誰もが一度は目にしたことがあるであろうこの画像。綺麗なロの字型のブロックが整然と並んでいる。ちょっとぞっとするかもしれないけれども、これはバルセロナの街を鳥瞰したときのもの。

新市街の鳥瞰写真(引用: https://ja.wikipedia.org/wiki/バルセロナ)

バルセロナと言えば、実はアーバンデザインがとても有名で、RIBA(王立英国建築家協会)のゴールドメダルを都市として唯一受賞した場所なのだ。

そんなこの場所のアーバンデザインの歴史はとても深く、そして今もなお都市スケールで変わり続け進化している街なのだ。

簡単にアーバンデザインの歴史を紐解くと、この街の転換期は主に2つある。

一つ目はこの碁盤の目上の新市街が形成されたセルダ計画。

この計画によって、複雑に入り組んだ旧市街の外側に碁盤目状の新市街が広がることになった。バルセロナの街の面白いところは、明確に時代とその意図が違う空間が隣り合っていて、街の歴史が可視化され航空写真で見るとそれが読み取れるところだと思う。

他にも色んな話があるけれど、ここでは割愛。また、アーバンデザインについてはいつかじっくり書きたいなって思っている。

バルセロナの航空写真。新市街と旧市街が明確に別れている。

ちなみに余談だけれども、HUNTER x HUNTERの12巻に出てくる幻影旅団が隠れていたヨークシンシティの地図は、バルセロナの新市街地辺りをモデルにしている。

(ちなみにゴン達がいるところは治安悪め)

HUNTERXHUNTERに出てくるヨークシンシティの地図

バルセロナの航空写真

写真二枚共に地中海ブログ(http://blog.archiphoto.info/?eid=1170708)より引用

 

二つ目は1992年バルセロナオリンピックによる都市再生。

オリンピックによって、荒廃しきっていた旧市街と、閉ざされていた海辺空間が生まれ変わった。オリンピックが契機として打ち出された政策は、公共空間をいかに回復していくかというところに主眼が置かれ、"図"としての建物だけではなく、"地"としての公共空間を改良し、その領域を広げていくことであった。

・旧市街再生

整備が行われる前の旧市街はとても危険な地区で、建物が密集していることから住環境もとても悪く、貧困層が住みつき治安も悪化し、地元の人でも近づけない場所となっていた。

そんな場所に対して行われたのが、建物や街区を取り壊し、その場所に公共空間を新たに生み出す方法。

建物を取り壊す

→その場所を広場とする

→まわりにカフェができたりして人が流れ込む

→通り道に他にも店ができたり周りの建物も変化していく

それを様々な場所で実施していくことで、次々と変化が起きてくる。

つまり「部分」から整備を進め、点として一定程度の成果を生み出し、続いてその点をつなぎ合わせ面的な整備を進めて「全体」を再構築するという戦略である。

さらにそのようなプロセスを踏むことで、市民の認識としては

徐々に劇的に変化

→市民が再生を実感

→都市政策への信頼が高まる

ということが起き、政策としても賛成派が増加し、やりやすくなってくるということだ。

何事も小さいことからコツコツやっていくことで大きな成果を生み出すんだな、と思わせてくれる。

・海辺空間の再生

実はバルセロナ市民は、オリンピック前まで地中海都市でありながら地元の海で泳げなかったのだ。これこそ宝の持ち腐れである。

現在ビーチになっているあたりは、当時は工場関連の倉庫等の施設が建ち並んで不法占拠状態となっていた。それに加えて、海岸線には鉄道や高速道路が通されていましたので、物理的にも海と遮断されている状況にあった。

バルセロナはオリンピックをうまく利用して、市民共通の財産としての水辺空間を回復することを決断し、そこで取られた手法は、オリンピック村を建設すること、空間を遮断していたインフラはとにかく埋めて、海との連続性を確保することだった。

これをすることで市民の生活の質も向上し、街に対しての誇りを市民へ与えることにも成功した。

オリンピック以降も国際的なイベントがある毎に海沿いが整備されたり、エリアごとに開発が行われていて、街の中に良い公共空間が生み出されている。

市民の財産となったビーチ。沢山の人で賑わう。

 

地元で著名なプランナーのひとりであるジョルディ・ボルジャは

「都市とは、道に集う人々そのものである」

といった。

こうした空間哲学が根本にあるこの場所では、何よりもまず、誰もが認識できるヒューマンスケールの公共空間である街路や広場に、人がどのように集い、どのような活動するのかということを考えることが最も重要なのである。

その考えを示すかのように、バルセロナでは月一以上の頻度で街や小さな広場で祭りが行われている。夏は言うまでもないが、冬ですらいたるところでパレードが行われ、寒空の下、夜通し酒を飲み踊り狂う。

彼らにとって寒さなど関係ない。大事なのは街をどのように使い倒すかなのだ。

楽器隊が突如出現したりする。

広場に焚き火がたかれ、みんな肉を持ち寄ってBBQをする。

スペインは失業率がとても高く不況だし、決して豊かな国とはいえない。けれども、人々はみな幸せそうに過ごしている。

そんな姿を目の当たりにする度に、公共空間の豊かさとは生活の豊かさとか幸福度に直結しているのだろうな、と思わされる。

スペインの公共空間を彩っているのはやはりスペイン人の気質、特にその寛容さと明るさなのだろう。

スペイン人は細かいことは気にしないし、楽しければなんでもいいでしょ精神がすさまじい。

日本の公共空間で夜通し盛り上がっていたら、確実に通報されるし、祭りのときですらクレームが来ることもあるだろう。

けれども、スペインでは違う。公共空間はみんなが楽しむところという考えだし、むしろ楽しそうな雰囲気を感じたら、すぐさま外に繰り出すだろう。

日本人はそもそも生真面目だし、あまりオープンではない。日本の仲間内の飲み会で知らない人を呼んだら、微妙な雰囲気になると思う。けれどもスペインでは、人が多い方が楽しくね?っていう素直な考えのもと、知らない人がたくさん来てもすぐ打ち解けるし、みんなで踊り始める。

ある時、2つのパーティーに呼ばれて、1つ目のパーティーを早退してもう1つの方に合流しようとしたら

「パーティーが2つあるなら何で前もって言わなかった?言ってくれれば全員でそこに参加できたのに。ここは日本じゃない、スペインだ。」

とガチで怒られた。この言葉は、誰かが抜けてしまうと、少し白けてしまうし、みんなで騒いだほうが楽しいという素直な感情からだろう。

このように日本人的なところが度々出てしまって反省することは多い。

さらに日本人は共有することが苦手な気がする。一人暮らしが多くてシェアハウスなんて稀。変に空気を読んでしまうし、生活のなかではパブリックよりもパーソナルを守ろうとする人が多い。

これに関連して、スペイン人の友達が言っていたことを思い出した。

「設計する時、ヨーロッパの人はパーソナルな空間をどうやってつくるかという方向に向かうけれども、日本とかはパブリックな空間をどうやってつくるかという方向に向かうよね」

たしかにヨーロッパは広場とかパブリックな空間が既に充実しているから、パーソナルな空間を考え、一方で、日本はパーソナルな空間がある程度充実しているから、どうやって豊かなパブリックな空間をつくっていくかを考えるのだろう。

街とか空間というものはダイレクトに人々の考えに影響を及ぼすし、逆にそこにいる人の気質が投射されるのが街なのかなって思う。

実際にここに半年住んで、明らかに自分の考えや性格に変化が出ていることを実感する。

色々言ってきたけれども、何を言っても日本人の気質は変わらないし、日本は日本でとても素晴らしい場所だし、めちゃくちゃ好き。

ただ、電車のホームドアの設置やデザインされたサインの下に貼られる説明の紙、過度な手すりなどの過保護っぷりは残念でならない。機能性が重視されすぎているけれども、もうすこしだけみんなが細かいところに目を瞑ってくれれば、劇的に変わってくるだろうなと思う。バルセロナの旧市街再生のように、そういった小さな意識とかからコツコツとやっていければ、日本ももっと彩られるはず。

 

話は逸れたけれども、バルセロナの都市計画はずっとうまくいき続けているようにも聞こえるが、そんなことはない。成功の裏にはたくさんの失敗を繰り返しているし、現在でも問題は山積みだ。

けれども、バルセロナは現在でも土木、建築、都市のスケールを横断するようにアーバンデザインが実践されているのがバルセロナの魅力だと思う。

最後にそんな街を一望できるおすすめスポットを紹介したい。

街を一望できる

パノラマ写真

砲台跡

ギナルド公園/JDVDP, AAUP

バルセロナの街を一望することができる。上からみることによって都市の構成もある程度把握できる。

この公園は昔砲台があった場所でそれを改修したもの。改修といってもこのデザインを担当した建築家はほぼ何もしていない。落書きを綺麗にしたことと、コールテン鋼の手すりをつけただけ。この場所を活かす手法として、あえてデザインをしないことを選び、既にあるそのポテンシャルを引き出すことに力を注いだことは好感が持てる(バルセロナでは過度な操作をして魅力を潰してしまっているものも多いので)。

民俗学者の宮本常一が父親から言われたことの中に

「新しく訪ねていったところは必ず高いところへ上って見よ。」

という言葉がある。

そんな言葉にぴったりな場所がここ。バルセロナに訪れたら、是非この場所にいって欲しい。中心地からもそんなに遠くないのでオススメ。

他にもバルセロナには魅力的な公園がたくさんあるが、今回はここまで。

おわり

イワタ

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