ETSAB教育事情
こんにちはバルセロナに留学している藤村です。
今回は世界の建築教育ということで僕が通っているバルセロナ建築大( Escola Tècnica Superior d'Arquitectura de Barcelona通称ETSAB)について書きたいと思います。
まずバルセロナ建築大学はカタルーニャ工科大学の建築学部のことを言います。基本的にスペインで建築を勉強したい人はバルセロナ建築大かマドリード建築大を選ぶことになるので、以前岩田くんが言っていたように生徒の数はとても多いです。歴史ある学校で先生方も有名な建築家が多く、頻繁に建築家のレクチャーも行われています。
基本的に学生は各学年1学期で建築デザインのスタジオと都市デザインのスタジオが一つずつあります。エスキスはそれぞれ週に2回と1回なので、一週間にエスキスが3回というハードスケジュールです。それに加えて歴史や構造、設備など通常の授業もあるので、他の国から来た留学生もその忙しさに驚いていました。スタジオでは教わる先生によってアプローチ方法やプレゼン方法が違うので、まず最初にどの先生を選ぶかが重要になります。しかし人気の先生はすぐに埋まってしまうので大変、英語を話せない先生も中にはいて、留学生はさらに大変です。日本と異なるのは一人でやっても良いし、誰かとグループを組んでやっても良いという点です。(僕は前期はグループで後期は一人でやりました。)日本の設計課題は一人でやることが多いと思うので、議論しながらの設計が経験できるという意味ではとても良いと思います。
僕の先生だったJosep Ferrando氏
実際にスタジオをとってみて感じることは、まず建築を都市の一部として常に意識しているということです。日本では敷地境界線が決まっていてその中でできることを最大限設計していくわけですが、バルセロナの教育では敷地はざっくり決まっているだけで、周辺の道や街区から設計していくことになります。建築単体のデザインの前に都市スケールで敷地を周辺と一体として考えることが求められます。都市デザインのスタジオがあることもそうですが、バルセロナでの教育の特徴は都市と建築を架橋したデザインであると感じました。またデザインのプロセスにも大きな違いを感じました。毎回のエスキスで先生に指導してもらうのは共通しているのですが、基本的に生徒のアイデアを批判されることはありません。日本でのエスキスは毎回ボコボコにされるイメージですが、ここではあくまで訂正してあげる程度でアイデアそのものについてはほとんど口を出してこないです。その結果ほとんどの人が線形のプロセスを踏んでいくことになります。設計する上で案が変わったりしないのはデザインする建築を深くまで考えられるようになるようになり良い点もありますが、その一方でデザインを見なおす時間があまり生まれず、アイデアに強度を持たせることができないのではないかというネガティブな側面も感じました。
スタジオ発表ディスカッションの様子
プレゼンテーションも担当の先生によってやり方が異なるようで、僕の先生のスタジオは模型の他にブックレットを使ってのプレゼンテーションをしました。他のスタジオではボードを使ったところや、複数のイメージ画像だけを使ったプレゼンテーションなどがありました。一応模型はどの先生でも必須のようでしたが、あくまでコンセプトやボリューム、マテリアルを伝えるためのツールであって、日本のように模型を作り込むような人はほとんどいませんでした。あとはみんなドローイングがとても綺麗でプレゼンテーションに関しては日本の学生よりもずっと優秀だと感じました。
僕の選んだJosep Ferrandoスタジオの展示
他のスタジオの展示
表現が上手い理由として、プレゼンテーションに関する授業があることが理由の一つにあげられると思います。まずCADや3Dモデリング、フォトショップなどのソフトウェアの使い方やハンドドローイング学ぶ授業が1年生の頃から必修の授業で教育に組み込まれています。そこで基本的な図面の書き方やパースや絵の作り方を学びます。その他に選択科目で写真の授業や映画の授業があり、どういう構成をすれば美しく見えるかどういう色を使うと綺麗に見えるかを理論的に学ぶことができます。留学をする前に外国人はみんなセンスがあるなーと漠然と感じていましたが、しっかりと理論的に勉強しているのだと知りました。日本でこのような授業はほとんどないと思います。設計の仕方だけではなく、どうやって見せるかも重要視されており、実際にスタジオのスコアも案の点数とプレゼンテーションの点数の平均点が最終的な点数となります。
他の学生のドローイングかっこいい
ドローイングの綺麗さの他にバルセロナの学生に感じたこと、それは手のはやさです。授業数が多く、設計だけに多くの時間を割くことができないことから自然と手のはやさが身につくのだと思います。みんな考えるよりも先に手を動かしている印象で、コンセプトメイキングや前段部分よりもすぐ図面を持ってきます。イギリス人は考えてから行動する。フランス人は考えながら行動する。スペイン人は行動してから考える。ということわざのようなものを友人が教えてくれました。この国民性の違いは設計にも言えると思います。日本人はイギリス人のように考えてから行動するタイプかと思います。日本人の学生はしばしば考えすぎて形が出てこないことがあるかと思います。逆にこちらの学生の場合、形の前に案そのものの面白さや強度が足りない人もいます。考えることと手を動かすこと両方使いながら設計していくのが大事だと感じました。
展示の様子
スタジオ発表後一部の生徒と先生と記念写真をとりました
最後に、バルセロナ建築大は優秀な学生も多く、先生も魅力的ですが、大きな問題があります。それは言葉の問題です。ここバルセロナの公用語はカタルーニャ語であり、授業の多くがカタルーニャ語で行われます。なのでスペイン語がわかる留学生でさえ苦労することになります。また英語の授業はごく少数なので、留学生は少なくともスペイン語を何年間か勉強してきている人が多いです。バルセロナに留学したい方は注意してください。笑
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