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「イタリア建築・デザインの父」

こんにちは。ミラノに留学中の大島です。こちらはすっかり春になり、桜の代わりにポプラの綿が街のあちこちに舞い散る時期も終え、最近は梅雨さながらに雨の日が続き、少し憂鬱です。

Torre Pirelli屋上よりミラノの街を望む。こうしてみると歴史的街並みとは思えないですね。

さて、今回は第3回リレーテーマ「My favorite architect」、「ご当地建築家」ということで語らしてもらおうと思っていますが、ミラノにおいてこれは結構難しい。なぜならパッと代表される建築家が出てきにくいから、、、。例えばローマならベルニーニ、フィレンツェならブルネレスキとイタリアの他都市ではその都市をつくったと言っても過言ではない代表的な建築家を想起できるけれど、いざミラノとなった時、どうしても少し考えてしまう。

もちろんぼくが通うPolitecnico di Milano出身の著名な建築家は何人もいるが、彼らが皆ミラノのために、ミラノで活動を展開していった訳ではないんです。加えてぼく自身この建築家が最も好きで興味がある、と特定できないこともあります。

ただそんな中で強いて一人挙げるとすれば、ぼくはジオ・ポンティを挙げたいと思います。彼はとりわけミラノを始めとしたイタリアの歴史的な価値や要素に目を付けてそれを建築に取り入れたわけではありません。ただ彼がイタリアのデザインに与えた影響はとても大きいのは確かです。そこで今回はイタリアの建築デザインを語る上で、外してはならないという点からジオ・ポンティを紹介したいと思います。

とはいえ彼の生まれは、イタリア・ミラノです。そういった意味ではミラノの建築家と言っていいのかもしれません。

そもそもジオ・ポンティはル・コルビュジエと同世代を生き、建築家兼デザイナーとしてイタリアを中心に活動した人物です。建築家として独立以前はタイル製造会社に勤めていたということもあり、彼の作品は建物から食器やタイルまでスケールを問わず存在しています。その超広範囲なデザイン対象とその活動成果から彼は「イタリア建築・デザインの父」と称されているほどの人物です。

彼はまたイタリアの建築デザイン雑誌「Domus」の創刊者でもあり、その雑誌に取り上げられている内容が建築だけに限らず多岐にわたっているのも、彼の活動内容故の結果であるといえます。

さて、そんな彼のデザインですが、シンプルながら不変的であり、時代を問わず今もなお人々に親しまれ、使われています。

Gio Ponti作のお皿。同居人のイタリア人も持ってました。

彼のデザインは基本的に幾何学形態を応用しています。それは一見単純でありながら、組み合わせを可能としており、多様なパタンを持っています。これはタイル製造会社時代の経験が大きく影響していると考えられます。その証拠に彼の建築は床を始めとして多くのところでタイルを使っており、それが空間の雰囲気を大きく変えています。また建築の作品において彼はタイルをその外壁の仕上げ材として多用しています。それも立体タイルとしており、光の当たり方、時間、季節に応じて様々な表情をみせます。

Chiesa di S. Francescoの外壁:立体タイル

加えて彼のつくる建築には、もう一つはっきりとしたデザインマテリアルがあります。いくつかの彼の建築作品を見ればそれがすぐに何なのか気付くことができるでしょう。

Torre Pirelli

Chiesa S. Maria

時には平面形状として、時には開口部の形として彼はその建築作品のほとんどの中に「六角形」を取り入れています。

その理由として、彼はデザインテーマとして「建築は結晶である。」という言葉を残しています。そこから六角形は“結晶“を純粋に示した形と読み取ることができます。

ただし六角形という形は、ハニカムを始めとする物質の普遍的で有機的な構造原理を示しているともいえ、建築を単なる箱ではなく、生物的な視点で捉えようとしているのではないかとも考えられます。

その証跡として、

「...今日の壁はもはや、かつての固体、密な真の壁ではありません。それは骨格を覆う皮膚なのです」

「建築は、外は厳格で緊密なもの、内は遊びと驚きに満ちた有機体です。外側は結晶ですが、内側には人生があります」

などの言葉も残しているようで、建築を単なる無機物ではなく有機的要素を持つモノとして捉えていることが分かります。

これらの言葉を象徴するように建築のマテリアルの決定や構成がなされています。

代表的な例としてミラノにあるサン・フランチェスコ教会があります。その特徴的なファサードと建築の本体の関係は、人体における皮膚と筋肉のようになっています。複数の六角形の開口で飾られた特徴的なファサードは独立した一枚の壁であり、本体を隠しつつ、建築の表情を決める皮膚のような重要な役割を担っています。一方で本体は表面の素材も色も変わり、まるで人間の筋肉や血管を想起させるようです。それは正面ファサードとは打って変わり建築を地に留めガッチリとした安定感を感じさせます。

The facade of Chiesa di S. Francesco

The main volume of Chiesa di S. Francesco

こうした彼の建築の考え方は、同時期に活躍しその後のモダニズムという建築スタイルに大きく影響を及ぼしたル・コルビジュエとは似て非なるものだったといえます。それまでの格式ばった建築を解体し、よりシステマチックにしようとする点においては似ているのかもしれません。ただそこで彼が生物的な要素に注目し洗練させたことは、タイル職人という特殊な経歴とミラノという常に変化し続ける都市に生まれ育ったからこその賜物だったと言えるのかもしれません。

またそうした当時のデザイン手法と少し違うベクトルで進んでいた彼の考え方は、時代に捕らわれない自由な発想としてイタリア人にリスペクトされたのかもしれませんね。

ということで今回はかなり簡単ですが、イタリアを代表する建築家ジオ・ポンティを紹介させていただきました。本当は作品一つ一つを丁寧に説明していきたいところですが、正直言ってまだ私もそこまで詳しくないのと、話し出すとキリがなくなってしまうので今回はこの辺で!!

Ciao ciao !

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