生活の楽しみを知る。
こんにちは。昨年から今年にかけ1年間スウェーデンはヨーテボリに留学していた河合杏奈と申します。
アスプルンドのヨーテボリ裁判所増築。
今回のテーマ、「なぜここへ留学したのか」について、日本に帰国した今、振り返ってみようと思います。
留学すること自体はなんとなく学部にいた時から考えていたのですが、具体的に国や時期などが決まって留学が現実味を帯びてきたのは修士1年の時です。
その時は、とりあえずデンマークに行きたい!と思っていました。デンマークには、建築に携わるすべての人のスーパースター、ヨーン・ウッツォンがいるからです。私は学部の卒業論文で彼の研究をしていたので、自然とその辺りに行くのだろうな、ということで。
卒業論文を書くときにデンマークを中心にウッツォン建築をまわりまくる旅をしていたのですが、洗練された建築、家具のデザインはもちろん、デンマークや北欧の”世界の果て感(ひたすら続く松や白樺の森林、常にどんよりとした暗い空、たまに見る太陽とカラフルな空の限りない美しさ、そんな景色を眺めながら電車に乗って一人でどこまでも北に行ける感覚)”が最高に気に入って、留学するならデンマークや!と半ば決めかかっていました。
コペンハーゲン郊外のフリーデンスボーの集合住宅。
そして留学先を考え始めたとき、建築でデンマークに留学するならウッツォンの卒業したデンマーク王立芸術アカデミーか、オーフス大学!!ということで留学プログラムをいろいろ探してみました。が、東工大との交換留学の提携がなかったので、割と早急に諦めました。笑 留学準備にそんなに時間も割けなかったし、とりあえず入りやすいところから攻めよう、という精神で。
ちなみに最初からインターンに行くという選択肢もありませんでした。チキンなので。
その際に、なぜあまり他の地域の選択肢が出てこなかったのかは今となってはかなり謎ですが、やっぱり卒業論文の時の北欧での記憶が素晴らしかったというのが大きいと思います。大学在学中に他のヨーロッパの国々にも訪れていたのですが、東京生まれ東京育ちの平和すぎる環境でしか生きたことのない私にとっては、ちょっと物騒な感じがして一人で安心して暮らせないだろうなということで、自然と選択肢からは消えていました。
あとは英語です。とにかく英語を上達させたかった私には、誰もが英語を流暢に話す北欧はいい練習の場になるだろうと思いました。
ゴットランド島の海岸と、ピンクな空。
そんな感じで、とりあえずチキンでビビリな私が行き着いたのが、スウェーデン、ヨーテボリにあるシャルマーズ工科大学です。留学を考えるまでは名前も知らなかった大学ですが、北欧では有名な工科大学ということでした。シーグルド・レヴェレンツがここで建築の構造を学んだようです。
さらにヨーテボリは、実は北欧の主要都市・ストックホルム、コペンハーゲン、オスロのちょうど真ん中に位置していて、どの都市にも電車で3時間程度で行けてしまいます。飛行機嫌いな私には持ってこいのロケーションです。
留学先が決まってから、徐々にスウェーデンという国に興味が湧き始めました。
社会福祉が充実していて、世界幸福度ランキングでも常に上位に位置する国では、人々はどのような生活を送っているのだろう?
緯度が高く太陽の出る時間も季節によって激しく変化する国では、季節によって人々の活動はどのように変化するのだろう?
冬の寒さや暗さを乗り越えるために、人々はどのような工夫をしているのだろう?
そしてそれらの特徴的な要素が、現地の建築とどのように関わっているのだろう?
一年間スウェーデンで暮らすということは、日本とは全く異なるすべての季節を暮らし抜き、生活のあらゆる面でスウェーデンのシステムにさらされるということだと考えたときに、日本人として留学するのに非常に得るものが大きい国だという予感がありました。
その留学の内容については後々。
北欧に特徴的な、照明デザインに関する企画展。ストックホルムにて。
今、日本に帰ってきて感じるのは、なんとなく違和感を持っていた日本での生活に、はっきりとした疑問を投げかけられるようになったなということです。
スウェーデンと日本は劇的に違う、ということはありません。寡黙で真面目、という典型的なスウェーデン人の性格は、日本人に共通するところも沢山あります。ひと昔前までは、スウェーデンでも男女差別や劣悪な労働環境などの問題もあったようです。しかし、そんな歴史も嘘だったのではないかと思えるほど、私の出会ったスウェーデン人はみんな健康に生き生きと働き、家族との時間を大切にし、自然体で生活を楽しんでいるような人たちばかりでした。
価値観や生活水準があまり日本と変わらないからこそ、人間としての最低限必要な生活を満たした上で何を大切にして生きるかを考えるきっかけになったし、日本が改善するべき点をたくさん知ることができたと思います。
もちろんいい建築もたくさん見ることができましたが、第一に学んだのはそういうことでした。
ヨーテボリのHaga地区。暗い冬に暖かい明かり。
留学先に迷っている方々に、最後に言っておきたいことがあります。
多分もう様々なところで言われていると思いますが、スウェーデンはとにかく目を疑うほどイケメン美女ばかりの国です。トラムやバスの中にも、普通に立ってるだけで背景に花が舞っちゃうような人がごまんといます。
さらにそんな人たちに優雅なアクティビティが加わって、大変なことが起きています。颯爽とベビーカーをひく長髪ブロンドイケメン、教会のミサで前の座席に座ってたと思ったらいきなり壇上に出て聖歌のピアノ弾きだす白シャツメガネイケメン、休日の過ごし方はブルーベリー摘みのオシャおねいさん、などなどです。
スウェーデンにきた日本人の友達に、「こんなとこ住んでたら辛いでしょ、かわいそう」と言われました。
そんなわけで、日本で働きすぎて疲れ切った人には、いろんな意味でスウェーデン留学をお勧めしたいなと思います。
河合杏奈
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