日本・東京からインドネシア・バリ島へ
2017年の年明けから、南国の生活しやすさにどっぷり浸かっている阿部光葉です。
はっきり言って、インドネシアにはかっこいい現代建築はほとんど無い。
そしてまだまだ発展途上ゆえ、基礎科学系の学生や建築の意匠系の学生が留学することは滅多に無いのである。
では何故インドネシアに留学したのかというと、「東京で生活する現代人が生きているという実感を再獲得するために有効な哲学」を、「それに対抗しないような建築」のデザインを通して空間化することを学ぶには、両者が存在するインドネシアのバリ島が適していたからである。 できるだけ忠実に表わそうとして固い言葉になってしまったが、私は美しくて理性的な建築よりも生命力に溢れるアジアの建築に興味があるのだ。
東京生まれ東京育ちでだれよりも東京を愛しているつもりだが、学部時代から自分を囲む生活や空間に生き生きとした活力がないことを感じていた。
そして建築意匠を学ぶ中で、複数の曲面や複雑なシークエンス、素材感のある表皮を持つ建築に惹かれることが分かってきた。
それでバリ島のバリ・ヒンドゥーやそれ以前から伝わる教えを基にした建築や地域のデザイン、生活の仕方を少しでも感じとれたら、共通点の多い日本にも応用可能なのではと思った。また比較的バリ島に多い現代の竹建築に単純にワクワクとイキイキを感じたのでバリでのインターンを計画した。
現在は首都ジャカルタのあるジャワ島のバンドゥンという街に滞在している。最初の半年はインドネシア語習得とバリの建築家の情報収集、インドネシアの現代建築家と建築学科の現状把握を目的に、ここバンドン工科大学で派遣交換留学の予定。
夏からはバリ島に移り、半年強現地の建築事務所でインターンを計画している。
ここ最近になって東南アジアの建築や建築家を日本国内のメディアで見ることがあるとは言え、インドネシアの建築家はあまり国際的に注目されたり発信したりしていないので、理想的なインターン先がないか現地で建築関係の友人たちに聞いてまわっている。今のところ、竹建築をメインにやっている事務所はバリの古い哲学を意識して設計していないこと、バリ人の伝統的な方法を引き継いで設計している事務所で惚れるような設計は少ないことなど、両者がうまく両立された事務所はなかなか無いことが分かった。よって一つの事務所に絞らないなど別の手段を模索中である。。。
インドネシア・バンドゥンでは、人々が複雑性を残したまま扱われていて、合理化されすぎないことで逆に利用しやすいシステムに溢れていたり、第二次産業がすっ飛ばされて成長しているせいか日本ではあり得ないようなシーンを見たりする。
衣食住も産業の後ろに全てが隠れてしまうこと無く、上半身くらいはひょっこり露出されている。もちろんH&Mやハイブランド、マクドナルドや綺麗なレストランもある。けれど、好きな布を選んで路地裏の安い仕立て屋さんに持って行けば、自分好みの服を作ってもらえる。市場に行けば虫が食べることのできる泥付き野菜や、朝潰したチキンを好きな量買える。小腹が空けばそこら辺の屋台でスナックを揚げてもらえばいい。
自給自足活動は全くしていないし、おしゃれなカフェや大学の沢山ある都市に住んでいる。しかし高額を支払ったり特別な努力をせずとも、このような消費スタイルを選択できる。
私はこの一年強で、インドネシアのアニミズム的知恵や近代化との妙なバランスの取り方、生命を感じる空間を、少しでも感じ取ることができたらいいと思っている。
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