IUAV教育事情
こんにちは!
ヴェネチア建築大学に留学していたミヤモトです。
もうすぐ帰国して1年が経ちそうです、感慨深い… 備忘録として、いろいろ書き残しておきたいところです。
今回のブログテーマは、世界の建築教育ということでした。
私はスタジオをとっていなかったので、園さんや浦山さやこちゃんみたいに紹介できないのですが。
1 Architectural Historyという授業について
2 建築史の授業を通して感じたこと
3 おまけ(ヴェネチア建築大のスタジオ)
と、こんな順番で書いていこうと思います。
あまり写真がないのでサイトから拝借
最初に、私にとって、いわゆるイタリアらしいイメージ"が強かった、Architectural History という授業について紹介しますね。
この授業なのですが、まず、ずいぶんとさっぱりした授業名だと思いませんか?
私も心底そう思いました。イメージしたのは、いわゆる建築史の授業で、日本でいうとこの西洋建築史とかそういうのかな?と思っていました。
そんなよくわからないままいった初回の授業でびっくり。
どうやら、そういうことではなかったらしい。
先生は、Angelo Maggi という方で、建築の写真の歴史に主眼をおいて研究しているそう。この授業でも、いわゆる建築史ではなく、建築の写真という観点でいくつかの具体例(人)を挙げながら歴史をみていくというものでした。
日本ではそういった観点の授業は受けたことがなかったので新鮮です。
この授業は、英語開講だったため、イタリア人と留学生と半々でした。そのせいか、思いつきでScarpaツアーをしたり、知り合いの建築家を呼んできて談義をしたり、先生の道楽という感じの講義でした。
木に被っちゃっているのも気にしない撮影者
なかでも、一番印象に残っているのが、G.E.Kidder Smithという建築史家であり建築写真家である人について扱ったこと。
この人、知っている方っていますか?
私はまっっっったく知らなかったのですが、なぜもっと早く知らなかったんだ・・と思いました。MoMAで何度か展示のキュレーターをしていたそうで、彼の最初の本は、その展示のためにブラジルを旅して写真を撮りまとめたBrazil Buildsというものです。
その後Sweden BuildsとかSwitzerland BuildsとかItaly Buildsとかだしています。
文字も写真もレイアウトも全て自分でおこなっていて、とても素敵なので、ぜひパラパラでもじっくりでもいいから見てみてほしいです。
気軽にぽちっとするには高価です
とまあ、Kidder Smithの話はこれくらいにして。
冒頭イタリアらしい、と言ったのは、この授業、毎回時間には始まらないんです。はやくても15分過ぎ、たいていは30分過ぎくらいに先生が来ていました。
また先生のスタイルも独特で、教卓を使うのではなく、最前列の机に座ったり(机に座っていました!)、机と机の間に立ったり、かなりラフな雰囲気でした。
イタリアの教育と言っていいかはわからないけれど、豊かだなと感じたのが、ヴェネチア建築大には、いわゆる通史的な建築史の授業以外がとても充実していたことです。
学部の最初の授業、私もちょっとのぞいてみましたが、まずはオーダーについて、古典の傑作について、その後ぽーーんととんでルネッサンス。しかもこのモチーフが、とか、パターンの組み合わせが、とか細かいことについて扱うんです。
「あれ?ゴシックは?ロマネスクは?通史はやらないの?」と思って尋ねてみると、そんなのみんな知ってるよ〜とのこと。なるほど、さすがイタリア。特に建築を学んでいたわけでもない同居人たちでも、歴史を学ぶ過程で建築も扱うためある程度知っているようでした。恐れ入ります。
授業ノートを復習がてらまとめたもの
ちなみに、イタリアは高校から専門を学べるそうで、高校では建築を勉強していたよ!という人もたくさん会いました。でも大学の専攻は化学だったり、日本語だったり、経済学だったり、方向を変えることもよくあるそうです。
ちょっと話がそれましたが、ここでの建築史の授業は、流れを学ぶよりもう一段階上のものでした。流れを学ぶことは、高校でもできるし、自習も容易いけれど、その先は専門家である先生たちにこそ教えられることだよな〜と改めて思いました。
西洋建築史に対してあまりよくわからない、という気持ちがあったんですが、先生たちの研究の話や、すごく詳細の部分的な話を聞いていると、「なるほど、ここにおもしろさを見いだしているのね」とわかり、どんどん興味が湧いて周辺のことも自然と学べました。論文などを通して一分野極めると、他のよく知らないことでも、それと対比しながら物を見るのと同じ感覚なんでしょうか。
ま、ひとことで言うと、日本での建築史の授業とはかなり違うけど、とってもおもしろかった、ということです。
ちなみに、スタジオですが、他の学生からまた聞きした話によれば。
ヴェネチア建築大学のスタジオは、スタジオをとると勝手にいくつかの座学の授業も芋づる式についてくるシステムなんだそうです(工法とか歴史とか環境とか、課題によって異なるそう)。課題に取り組む際、考慮すべき事柄についてしっかりと学んだ上で、デザインをする、ということなんですかね。
あと、ヴェネチア建築大学には、日本でいうところの製図室に該当する部屋はありません。彼らは流浪の民として様々なところで活動しています。図書館、空き教室、廊下、外のベンチなどなど。運河沿いに座って何やら熱く建築の議論を交わしている人なんかも見かけます。素敵ですね。
授業終わりにワインを一杯というのもよくある風景(画素が悪い・・・)
ということで、教育について、でした。
今回のテーマで、学校の写真を全然撮っていなかったことに気づきました。。普段の生活だから、改まって写真におさめていなかったのですが、もっとたくさん記録に残しておけばよかったと本当に後悔しています。。
今海外での生活を送っているみなさんはぜひ、普段のなにげない風景をたくさん撮っておいてほしいと思います。
ミヤモトでした。こちらからは以上です。
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