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ヨーロッパはクラシック、アメリカはジャズって考えてみた。

下田です。よろしくお願いします。

私は2016年9月から1年間UCBerkeleyに派遣交換留学生として留学している。

この文章を書いている現在は、秋学期と冬休みが終わって春学期がスタートしたところなのでちょうど留学の折り返し地点にいる感じ。そろそろ考えたことを何かにまとめたいなと思っていた矢先、根本くんから「ブログやらないか?」と連絡が来たので、早速、今回のブログテーマ「何故ここへ留学したのか」を書き始めた。

UCバークレー南側の街並み(1)

私が留学しているカリフォルニアのUCバークレーは写真みたいなところです。天気がいい、海が近い、物価が高い学生の街。サンフランシスコまで30分程度で行ける。

街並みは、100年前のヴィクトリアンの住宅がたくさんある。それから、南からスペイン人のカトリック伝道師がやってきた影響からか、スパニッシュな建物も見られる。また、アメリカン・アーツ・アンド・クラフトに影響された建築家が大活躍したみたいで、100年前のお金持ちが建てた建築家の住宅は結構見ごたえがある。特に下みたいな、オシャレな家もさりげなく紛れているのが、バークレーの街並みの魅力なのかもしれない。今後はこういったような、アメリカの建築と言われた時にあまり想像されない建築を紹介したいなと思っている。

UCバークレー南側の街並み(2)

そんなことで、なぜアメリカに留学しているか、

まずは箇条書きで考えて書いてみる。

・アメリカ人の英語のレベルについていけるようになりたい

・昔住んでいたので親の知り合いがいる

・気候がいい(特にカリフォルニア)ところに住んでみたい

・建築のみんなはヨーロッパに留学に行くから

こんな感じの理由が思いつく。

最初の3つは、ありふれた理由だと思う。最後の1つは、少し反発的な考え方で一番モチベーションが強い。しかし、この反発的態度と向き合って考えることで色々なことに気付づかされた。このことを考えるきっかけになっただけでもアメリカに留学しに来た甲斐があったかもしれない。

単純に考えて、歴史の長さで言えば、建築史の舞台はほとんどがヨーロッパであると思う。だから一見ヨーロッパへ建築の留学に行くのは正しい気がする。でも西洋建築史の授業をまともに聞いていなかった自分がヨーロッパへ留学して膨大な西洋の建築史を体感することできるのか、と聞かれたら、これには全く自信が持てなかった。名建築を見逃しそうな気しかしない。

数年前にオランダに行った時の写真、今思うといろいろ見逃してて悔しい

こんな感じで私にとっては、ある意味でのヨーロッパの建築への憧れと畏怖があることに気づいた。憧れは主に、西洋建築史というオーソリティの存在。畏怖は主に、結局難しくてわからないのでは、という心配から来ている。

個人的に、これは完全にクラシック音楽にそっくりだと思っている。その反面アメリカの建築はジャズ的だと思う。

ここからは脱線するが、個人的にはクラシックより圧倒的にジャズ(やロック、ブルース)が好き。ジャズはスッと入ってくる。3~7分ですごく心地良くなれるし、曲の背景なんか知らなくてもいいし、お酒飲みながら聞いてもいいというカジュアルさがとてもいい。(ちなみにラグタイムだけどもスコット・ジョプリンまではジャズっぽいなと思って楽しめる。)

一方でクラシックは違う。もちろん毎回コンサート自体はとてもいいし、また来たいとは思う。しかし、私はクラシックに対する感性が鈍いもので、指揮者が誰だとかどの楽団がいいだとか、そういうことを調べる程の熱意が見出せない。クラシックの持つハーモニーや全体構成など他の音楽にない良さを知らずにいると思う。

だから、私にとってクラシックというものは、自分の感性から全て地続きの範囲にない恐れ多いもの。感性も知識も全く足りない未熟な私には、背伸びしてお金を払うのはまだ時期早々で、大人になって感性と知識が備わるまで、クラシック音楽を鑑賞することは温めることにしている。

話を戻すと、私にとってこのクラシックという存在とヨーロッパの建築というのがとても似ていると思っている。またジャズとアメリカの近代建築もとても似ている。ちなみに建築史の山崎先生がおっしゃっていたが、近代建築とジャズ音楽は同時代を同じように発展してきたそうである。今回の話はこの発言にとても影響されている。

Raul Midonのライブ  アメリカの方が日本よりジャズの敷居が低く、料金も安い

そう考えると、ヨーロッパの建築。これは私にとってクラシック音楽みたいなものだった。共感してもらえるかわからないが、誰でも難しい本や映画などに直面した時に、今はわからないから後回しにしようって思うことはあると思う。それと同じで「西洋建築史も後回しにしよう」と決めてアメリカを選んでいるという訳。

一方で、私にとって、近代主義建築はジャズと同じように感覚的に受け入れやすい。雰囲気的には、コルビジェがマイルスデイビスな感じ。特に近代主義建築に強く影響を与えたと言われるアール・ヌーボーや、アーツ・アンド・クラフトの建物は音楽で言うところのラグタイム的な、時代の節目みたいな感じがするので、とても気になるしギリギリ楽しめる。そのうち少しずつ遡るように守備範囲を広げ、最終的には、西洋建築を受け入れられる許容力を持ちたいと思っている。そうなったら、ヨーロッパに乗り込んでいろんな建築を見に行きたい。

こうして、日本から西周りに直接ヨーロッパに行くのとは逆に、東周りに進みアメリカを挟むことで、建築史の教科書を逆から読んでいくということをしたいなと思っている。そのほうが、感覚的な飛躍も小さいだろうし何よりもアメリカにいる間に西洋建築史を勉強する時間稼ぎができる。

とはいっても、アメリカという国には、音楽で例えるなら下手な路上ミュージシャンくらいのダメダメな建築に溢れているのも事実で、がっかりすることもたくさんある。そしてもちろんヨーロッパには近代主義建築の名作も無数ある。いまでもヨーロッパにしておけばよかったと思わなくもない。要はどこでもいいのかもしれない。

だから、結局は音楽に例えて考えることで、どういう順で建築を見ていくか計画しただけということでしかないと、文章を書きながらに気づいてきた。別に西周りだろうが東周りだろうが、自分で納得できればいいのかなと思う。

そして何よりも、みんながヨーロッパに行ってしまい、とても寂しいので、ぜひアメリカ大陸に来て欲しいということ。これだけは覚えておいて欲しい。

UC BerkeleyからGolden Gate Bridgeを眺める。

(2017/02/08追記)

今回の記事に関連してポッドキャストで話したので、興味があれば聞いてください。

下田

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