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ヨーロッパの中心から、ヨーロッパを見てみたい

  スイスのETH Zürichに留学している五木田です。

 「なぜここへ留学したのか」と聞かれて答える、自分がスイスを選んだ理由はちょっと打算的かもしれない。それは

比較的簡単に行けるレベルの高い大学があって、ヨーロッパの中心にあるから

 自分が留学を決めたそもそもの理由は以前に記事を書いた岩田と似ていて、日本以外の国で生活をしてみたい、閉鎖的な日本という国から出てより多くのことを知りたいというのが理由。どうせ行くならレベルの高い環境に身をおいて自分を試してみたいし、ヨーロッパの中心で生活すれば簡単に旅行ができる。これらを満たすのがスイスだった。

ETHのテラスから見える、チューリッヒの旧市街

ETH本館裏のテラスから見えるチューリッヒの街並。ここからは主に旧市街が見える

 自分の場合、この留学をするまでに至る経緯の方が重要だったような気がする。

 こんなふうに考えるようになった一番のきっかけは、学部生の時に所属していた研究室にいた、一人の留学生の言葉だと思う。自身の一年間の留学を終えて最後に研究室を訪れた彼が、当時所属して間もない自分たち学部4年生のために話してくれた言葉だ。

「僕は母国から遠く離れた日本で1年間を過ごして、自分が何者であるかわかったんだ。だから君たちももしチャンスがあるなら、ぜひ留学してみて欲しい。」

 約4年間日本の大学で勉強してきて、漠然とした閉塞感を感じていた自分には重みのある言葉だった。彼は留学を経て自分のバックグラウンドを客観視できたことに価値を見出していたようだった。自分はそれを聞いて、彼の、他国の文化に触れようとする真摯な姿勢にとても納得がいったのを覚えている。

 加えて、その後の旅行で行ったウィーン、プラハで初めてヨーロッパの雰囲気に触れて感銘を受けたこと、自分の英語でも思ったより何とかなったという経験がそれに拍車をかけた。やや子供じみた場当たり的な考えがきっかけだけど、これらの経験は自分に1年間回り道してでも留学する決断をさせるには充分だった。

 

 こうしてたどり着いたスイス最大の都市、チューリッヒは、ヨーロッパと言われて思い浮かべる街とは似ているようでちょっと違っていた。思っていたより現代的で柔軟な街。中世を思わせる、いわゆる旧市街はあるものの、10分も歩けば端までいける範囲だけで、あとはほとんど新しい建物ばかり。街ではそこかしこで建設が行われていて、トラムに乗っていると建設現場が目に付く。それも、中だけ作り替えるのではなく、いちから新しいのを建てている。

 そもそも、チューリッヒが発展し始めたのは産業革命以後からで、それまでは小さな集落の集まりに過ぎなかったそうだ。街そのものが新しいせいか、トラムやバスはよく整備されていて便利。むしろ道路はこれら公共交通が前提に整備されているから遅延も少ない。鉄道網も充実していて、街の中心にある中央駅は日本を除くと世界で6番目に利用人数が多いそうだ。(日本の駅の利用者の多さには笑ってしまうが。参照: "The 51 Busiest Train Stations in the World - All but 6 Stations Rocated in Japan", JAPANTODAY, https://www.japantoday.com/category/travel/view/the-51-busiest-train-stations-in-the-world-all-but-6-located-in-japan)この人口の少ない小さな国にしては明らかに多く、地理的な要因を考慮に入れても、鉄道網がよく整備されていることがうかがえるだろう。

チューリッヒ中央駅構内。地下3階まであって、ホームの数は40を越える。写真中央の大掲示板がそれを物語る

 「柔軟な街」と言ったのは、街中でみられるパブリックスペースの取り入れ方がとても柔軟だと感じたからだ。

 例を挙げると、チューリッヒ湖畔にあるチューリッヒ歌劇場の前の広場。ここは駐車場を地下化したことでできたスペースを、そのままだだっ広い広場として残したもの。そこには椅子がそのまま置かれているだけ、でもちゃんと人が来て座る。この辺はヨーロッパっぽくて、人びともこのスペースを使う準備が出来ている。ただの広場として残しておかせる側の懐の広さにも感心してしまう。

チューリッヒ歌劇場前広場。2月なのに意外と盛況だった

 2つ目は高速道路の高架が地上の一般道と交差する場所。柱が細くてスパンも大きいせいか、高架の下には広い空間があって、暖かい時期は人がすわれる家具が置かれている。ここはいくつかのトラム路線が交差する場所でもあって、日本の暗くて狭い高架下のイメージとは異なる風通しの良さだ。もちろん地震の心配が無い、という前提の下ではあるが。

中央にトラムの架線が見える。左手の茶色いオブジェあたりに仮設の家具が置かれていたが 冬は撤去するようだ

 まだまだあるけど、これ以上書くと今後のネタにも響きそうだし、長くなるのでこの辺で。パブリックスペースの使い方の違いは、他の街で留学をしている人たちも感じているんじゃないだろうか。また、チューリッヒには3つの大学があるため、街の中心部には学生が多い。州立のチューリッヒ大学、芸術系の大学であるZHdK(チューリッヒ芸術大学)、そしてETH Zürich。街に若い人が多いことも、柔軟な発想の理由かもしれない。

 

 正直あんまりチューリッヒにはっきりしたイメージのないまま留学しに来たけど、まったく文化圏の違う日本人にしてみればとても暮らしやすい、整理されたスマートな街だ。もちろん物価の違いを除いての話だけど。

 小さくて新しいから、ぶっちゃけると街そのものにはたいして面白みが無いのも事実。ただ、そのぶんニュートラルで気楽に生活できるのがいいところだと思う。

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